期待と現実のギャップを埋める。日本企業が海外展開で失敗しないための実践ガイド
近年では、為替の影響もあり、海外展開を成長戦略の柱に据える企業が増えています。しかし、海外マーケティングの最前線で企業様を支援していると、日本の高品質な製品やサービスなら売れるはずだという期待とは裏腹に、想定外の壁にぶつかり撤退を余儀なくされるケースを数多く目の当たりにします。
私たちは、数多くの日本企業の海外マーケティングを泥臭く支援している事業者です。本気で現地の検索市場(SEO/GEO)や広告運用、SNSのアルゴリズムを攻略し、具体的な数字を取りに行くために知っておくべき現場のリアルがあります。
海外のビジネスメディアで語られる華々しい成功事例の裏には、地道な仮説検証と、時には撤退を決断するシビアな判断が存在します。本記事では、表面的なノウハウではなく、企業が海外展開の初期段階で本当に向き合うべきポイントを詳しく解説します。
自社商材の「越境適性」を客観的に見極める
海外展開の第一歩は、自社の商材が本当に海外のオンライン市場で売れる性質のものかを見極めることです。結論から申し上げますと、すべては取り扱う商品・商材によります。
例えば、靴やアパレルなどの領域がその最たる例です。これらは実際に身につけてみないとサイズ感やフィット感がわからず、ただでさえ国内のECでも返品率が高くハードルが上がります。これが国境を越えれば、返品の手間や国際送料のリスクが跳ね上がり、消費者の購買ハードルは極端に高くなります。日本の高品質な靴であっても、欧米やアジアの方々とは足の甲の高さや幅の平均値が異なるため、根本的なプロダクトフィットが難しいケースも少なくありません。
まずは自社の商品が、画面越しの情報だけで購買決断を下せる性質のものか、それとも現地での体験や現地の規格に合わせた細かな調整が必須なのかを、冷静に分析する必要があります。
海外投資をしたことによってかえって財務を圧迫してしまう可能性が高くなります。
初期フェーズは「テストと撤退判断」のための期間
多くの方が、海外展開の初期にすぐに利益を出そうと考えがちです。
しかし実際には、弊社では初期の広告費でデータを買い、継続か撤退かのラインを見極めるための投資として捉えるべきと推奨しております。※商材によります。
初期に推奨する具体的なアクションは、欧米圏にアプローチしたい場合、Meta広告とGoogleのデマンドジェネレーション広告の活用です。ここで鍵となるのが、日本国内の既存顧客リストの存在です。日本ですでに自社製品を買ってくれている顧客のデータをプラットフォームに読み込ませ、ターゲット国において似た傾向を持つオーディエンスに向けて広告を配信します。現地の情報が少ない状態でゼロからターゲティングするより、はるかに精度高く初動の反応を見ることができます。
例えば、フランスとドイツに広告を流してみて、より反応のいいフランスに絞ってより細かいターゲティングを行っていこうといった判断にも使用が可能です。
一方で、Googleのリスティング広告については、進出予定の国での実際の検索ボリュームなどの需要データを事前に調査し、十分なパイがあると判断した場合のみ投下します。現地での認知がゼロの市場で検索広告を回しても、クリックすらされないことが多いからです。
この座組で、まずは数ヶ月間テストマーケティングを実施します。 ここでリード(見込み客)が獲得できれば素晴らしいことですが、仮に全く取れなかったとしても、それは事業にとって大きな収穫です。この市場には自社の商材は刺さらないという判断を、予算を使い切る前の傷口が浅い段階で下せるからです。
さらに、このテストを通じて、その国ではどのような文章がウケるのか、どの年齢層や性別が反応しているのかといった生きたデータが取れます。この情報こそが、次のターゲット国への展開や、よりターゲットを絞った本格的な取り組みを行う際の強力な武器となります。
本気でSEOとGEO(生成AI検索最適化)を獲りに行く戦略

海外で検索市場を攻略する際、単に日本のウェブサイトを多言語翻訳するだけでは全く通用しません。現地のユーザーがどのような文脈で、どのような課題を抱えて検索しているのかというインテント(検索意図)を捉え直す必要があります。
特に近年は従来のSEOに加え、GEO(Generative Engine Optimization:生成AI検索最適化)への対応が不可欠になっています。海外のビジネス層は、情報収集にPerplexityやChatGPTの検索機能を日常的に使用しています。
これらのAIエンジンに自社の商材をレコメンドさせるためには、単なるキーワードの羅列ではなく、明確な専門性、独自の一次情報、そしてAIが読み取りやすい構造化されたデータを提供することが求められます。例えば、自社の技術が既存の代替品とどう違うのかを比較表で示したり、現地の業界標準の数値を用いて解説したりすることで、AIの回答ソースとして引用される確率が飛躍的に高まります。SEOで検索順位の面を取りに行きつつ、GEOで指名検索に近い質の高いトラフィックを獲得していく。これが現代の海外デジタルマーケティングの定石です。
BtoBリード獲得の要:LinkedInとSNS運用の深い関係
BtoB商材を海外で売り込みたいけれど広告費に余裕がないという場合は、迷わずLinkedInを活用すべきです。
日本ではまだ転職活動のイメージが強いかもしれませんが、欧米やアジア圏のビジネス層において、LinkedInは日々のビジネス情報収集やネットワーキングのインフラとして完全に定着しています。ターゲット企業のキーマンを検索し、直接コンタクトを取る。地道ですが、これほど高精度で決裁者にアプローチできる手法は他にありません。
そして、私たちが現場で支援していて頻繁に目にするのが、工業製品や専門的な工具といった堅いBtoB商材であっても、SNSのDM経由で良質なリードが獲得できるという事実です。
過去にInstagramからのDMから始まったリードなどもあります。
なぜDMが来るのでしょうか。それは、単に製品を宣伝したからではなく、企業としての信頼(ソーシャルプルーフ)が蓄積されたからです。InstagramやFacebookで自社の商品力、技術力、精緻な製造過程、実際の使用シーンなどを継続的に発信していると、言葉の壁を越えて視覚的に品質が伝わります。それを見続けた現地のディストリビューターや工場の担当者が、「この企業なら信頼できそうだ」と感じ、DMで直接コンタクトを取ってくるのです。海外のバイヤーも、スマホの画面スクロールの中から新しい取引先を真剣に探しています。
展示会への出展は国内からスモールスタートで
海外展開といえば、まずは現地の大型展示会に出展するというイメージを持たれがちですが、初期段階での海外展示会への参加はあまり推奨しません。
渡航費やブース設営費など莫大なコストがかかる上に、現地のネットワークがない状態で出展しても、集客に苦戦することがほとんどです。まずは商材の性質に合わせ、日本国内で開催される国際的な展示会(海外のバイヤーが多く来場するもの)に参加することをお勧めします。そこで海外の方がどのようなポイントに興味を持つのか、その商材の商慣習が現地ではどのように行われているのか、どのような説明が響くのかをテストし、費用対効果や自社の体制に余裕ができた段階で、現地の展示会に挑戦するのが賢明なステップです。
マーケティングを無力化する「現地の商流」という見えない壁
最後に、特にBtoB系の商材において絶対に避けて通れない問題に触れておきます。それは現地の厳しい商流の存在です。
どれだけ製品が優れていて、デジタル上で完璧なアプローチを行い、リードを獲得できたとしても、それらが全く意味をなさないケースがあります。例えばタイなどの市場では、特定の業界において細かい商流が厳密に決まっていることがあります。既存の代理店ネットワークが強固で、そこに繋がらない限り、工場に部品一つ納入できないといった暗黙のルールです。
このような市場においては、マーケティングでリードを取ることよりも、現地の有力なコネクションを持つ企業を見つけて関係性を構築する泥臭いセールスが必須になります。事前の調査でこのような商流の壁に気づけた場合は、アプローチの根本的な見直しが必要になります。
海外展開は、徹底した自社分析、小規模なテストと冷静なデータ検証、そして現地のリアルな商習慣への適応という、地道な作業の連続です。JDOCでは、このような現場のリアルな課題に向き合い、お客様に最適な海外展開をサポートしています。